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結城浩 / Hiroshi Yuki

:hyuki: 情報のフローとストックについて/1人で仕事をするときに注意していること

フローとストックについて。

情報のフローとストックについて考えることがよくあります。自分が書いた文章や、見た本から得た情報などをどのように流してどのように蓄えるか。ざっと言えば、そのような話ですが、流れている部分と蓄える部分とでは、おのずから性質が違うという話でもあります。

でも、ここで一般的な話をしたいわけではありません。最近思うのは、「究極のフローや究極のストック」みたいな考え方はあまり適切では無いのではということです。

もちろん、自分で自分の情報管理をどうするかは興味深いテーマですし、それを改善していくのも悪いことではありません。全く悪くありません。私が言いたいのは、どこかに何か究極の方法があって、それに近づけていくという考え方はやや危険かもしれないということです。

というのは、それを本気で考え始めると、かなり深いところにたどり着いてしまうことがあるからです。自分が健康なときならば良いのですが、疲れているときや、あるいはメンタルが弱っているときに進むのが危険な領域に触れることがあります。本当に本気で考えていくならば、ということですけれど。

たとえば、情報のストックを例にとると、どういう形でストックしておくのが良いのかをしっかり考え始めると、当然ながら、その情報はどのように使うのかをきちんと考える必要があるとわかってきます。それが決まらなければ、良いストック方法なのかどうかもわからないからです。

でも、たとえば、自分がストックした情報をもとに何かを作る(たとえば本を書く)ことを考えるなら、そもそも自分が生きている間にどれだけの本が書けるだろうかなどと思い始める危険性があります。いやそれ自体は全く危険ではないんですけれど、くたびれているときや、空腹時に考えるのは危険だという意味です。

自分が危険な領域に考えを進めているかどうかを判断できるならば、判断できるうちに「これはちょっとよくない方向に踏み込んでいるぞ」のように察知していったん撤退する(本当に大切なことならば、改めて時間をとって考える)のが賢明だと思いますね。

これは、心の健康を保つ上でとても大切なことだと思います。

その意味で、自分が陥りやすい考え方のパターンを知っておくのは大切ですね。それから、もちろん、他者との交流や意見交換や、様々な形でのコミュニケーションは、自分の心の健康を保つ上でとても大切だと思います。

たとえば私自身を例にとると、私は毎日1人で本を書く仕事をしているわけですが、これは簡単に心の健康を病んでしまう環境のすぐそばにいるといえます。なので意識して、他者との交流を増やしたり、あるいは家族との話を行うことも大切だと思っています。

様々なチャンネルを通してコミュニケーションするのが良いと思うので、SNSを使ったり、メールを使ったり、ズームを使ったり、あるいは頻度が低くても、人に会ったり。それらの方法を散りばめることで、自分の健康や健全性を必要以上に崩さないように心がけています。毎週日曜日の礼拝も、大切なその1つになると思います。祈りは神様とのコミュニケーションですね。

毎週木曜日は、個人ゼミを行っています。これは、数学を題材にして、私にアドバイスをしてくれる方をお願いして、ズームを使っておしゃべりをしています。私が発表を行って、その方が数学的なコメントをつけてくださるという形で進めています。今週で23回位かな。これはとても良い、そして楽しい時間ですね。

毎週土曜日は、先日から始めている「結城浩の談話室」という企画を行っています。それはよく理由はわからないで始めたんですが、これもまた自分にとって必要な企画であるという気持ちを強くしています。こちらは画像は使わずに、音声だけでやりとりをしています。ズームは使っていますけれど、電話のようなものですね。参加者のフィードバックを見てみると、これは意外に好評ですね。思った以上に好評です。

この談話室のFeedbackに関しては今日午前中に書くメルマガでも触れたいなと思っています。私にとって大きな知見がいくつもありました。

本を書いているときには、レビューアさんからFeedbackがやってきますが、これもまた別の側面から私の健康を守ってくれているといえます。

様々なチャンネルを通じて、いろんな方とコミュニケーションを取ることは、私の心の健康と健全性を保つために大きく役立っています。私とやりとりをしてくださる多くの方々に感謝します。

情報のフローとストックの話をしようと思っていて、心の健康の話になってしまいました。でも無関係ではありません。どんなことであれ、きちんとやろうと考えたり、どのようにあるべきかと考え始めるときには、土台が必要になるからです。

知的活動を行う場合には、もちろん、自分が持っている知識や情報ソースや情報処理能力等はとても大切な土台ですが、それら全てを支えているのが、自分の心であることを忘れてはいけないと思います。

特に、何かをクリエイトする仕事をしている人は注意が必要です。自分が頑張って何かを作っているように感じますけれど、よくよく考えてみると、どうしてそれが自分の心や頭から生み出されているのかは、判然としないからです。

たとえば、くたびれているときや、酔っ払っているときには、クリエイトする作業はできないでしょう。ですから、自分が何をしなくてもクリエイトできるわけではなくて、心や体が健康な状態であって初めて成果物をクリエイトできるわけです。当然の話ですけれど、つい忘れてしまいそうになります。

コンセントから抜いたコンピューターは、しばらくは内部電池で動くことができますが、次第にパフォーマンスが落ちて、そのうち動けなくなってしまうでしょう。それと、同じように、人間もまた、様々な形での物理的、精神的なエネルギー供給が必要です。

私はその「エネルギー供給」を受けることは、様々な人とのコミュニケーションや、祈りを通じての神様とのコミュニケーションに大きく依存しているという自覚があります。ですから、それを長期的に途絶えさせないように充分注意しているつもりです。